多くの人にとって星景写真の入り口は明るいレンズを使った固定撮影になると思うのですが、
撮ってみればわかるとおり、固定撮影では露光時間に応じて星が点ではなく線として写ってしまいます。

では、星をより点に近い形で撮影するにはどうしたら良いか、という話になりますが、
赤道儀を使わないのであれば、単純に露光時間を短くするほかありません。

ただし、写真の明るさと被写界深度を保ったまま露光時間を短くするにはISO感度を上げる必要があり、
今度はノイズが増え画質が低下するといった問題が生じます。

今回紹介するStarry Landscape Stackerというソフトは、この増えてしまったノイズを低減するためのソフトとなります。
(https://itunes.apple.com/us/app/starry-landscape-stacker/id550326617?mt=12)
具体的には、露光時間を短くして撮影した写真を複数枚重ね合わせる(スタックする)ことでノイズを低減します。
このとき各写真の間で星の位置はズレていますが、
Starry Landscape Stacker
は、空(星を含む)に該当する部分を回転・平行移動させ、星の位置を合わせてスタックしてくれるという優れものです。
勿論、地上に該当する部分のスタックも同時にやってくれます。

スタックによるノイズ低減の原理については割愛しますが、
イメージとしてはランダムに発生するノイズを平均化し、わかりにくくするといった感じです。

以下の写真はスタック前後を比較したものですが、
パッと見でもわかるレベルでノイズが低減されており、その有効性が確認できます。


それでは、撮影時の設定からソフトの使い方まで順に説明していこうと思います。

 

  1. 撮影時の設定について
    早速ですが私が最もよく使う設定はこんな感じです
    SIGMA 14mm F1.8 → 15 F2.8  ISO6400
    SIGMA 20mm F1.4 → 10 F2.8  ISO6400
    撮影枚数は15

    まず露光時間ですが、
    星を撮影するときの露光時間の決め方として500ルールというものがあります。
    500を焦点距離で割った値を露光時間とすれば星がそれなりに止まって見える、というものですが、
    このルールを適用した場合、撮影する方角次第ではかなり星が動いてしまいます。
    そんなわけで私は更にその4-5割程度まで露光時間を減らしています。
    例)焦点距離14mmのレンズ : 15秒 (500ルールに則ると約35秒)

    次にF値ですが、
    これは被写界深度をどれだけ確保したいか、あるいはレンズの収差をどれだけ低減したいかで決まります。
    F値における被写界深度についてはレンズの焦点距離、画素ピッチをもとにスマホアプリで計算することもできますが、
    F値におけるレンズの収差についてはレンズごとに異なるので、
    どこまで絞れば周辺部のコマ収差や非点収差が許容できるようになるかを事前に調べておくと良いでしょう。
    目安としてはざっくり開放絞りから1~2段絞ったあたりでしょうか
    (一応、Samyang XP 14mm F2.4のように開放絞りから収差が少ないレンズもあるにはあります)

    続いてISO感度ですが、
    露光時間とF値が上記の考えに基づき決まってしまうので、
    実質、ISO感度で写真の露出(明るさ)を調整することとなります。
    私の場合は地上部の明るさ、光害の強さに応じてISO6400-10000あたりで調整しています。

    最後に撮影枚数(スタックする枚数)ですが、
    Starry Landscape Stackerの開発者の方は、
    10枚でも効果はわかるものの、可能であれば15枚はあった方が良いとコメントをされていました。
    原理的には枚数が多いほどノイズをより低減できるので、
    プリント用に可能な限り画質を上げたい、という方は更に枚数を増やしても良いと思います。
    なお、トータルの露光時間が長くなるため、飛行機がフレームインしてしまうこともありますが、
    スタックの効果で軌跡は目立たなくなるので、この点についてはそこまで神経質になる必要はないと思います。

  2. スタックする前の下準備
    では続いて、撮影後の処理について説明していきますが、
    Starry Landscape Stacker
    を立ち上げる前にいくつかやっておかないといけないことがあるので、
    先にそれらを説明しておこうと思います。

    ・ 歪曲収差と周辺減光の補正(
    +WBの統一)
    TIFFデータへの変換

    Starry Landscape Stackerでは空をスタックする際に元の写真を回転・平行移動させるのですが、
    補正なしでは歪曲収差や周辺減光の大きい周辺部で綺麗にスタックができなかったり、輝度むらができてしまいます。
    これを避けるため事前にLightroomPhotoshopでレンズプロファイルを用いた補正を行います
    あと撮影時にオートホワイトバランスを使っていた場合は各写真の間でWBがズレてしまっている可能性があるので、
    この段階でWBを揃えておいてください。またStarry Landscape StackerTIFF形式以外は読み込むことができないので、
    補正した写真データはLightroomPhotoshopTIFF形式に変換をお願いします。
    以上の内容が済んだところで、ようやくStarry Landscape Stackerの出番です
  3. Starry Landscape Stackerでの作業
    作業の工程は5ステップです。
    ファイルの読み込み
    写真上で星の位置を選択
    空に該当する部分のマスクを作成
    スタックの基準となるファイルの選択
    スタックの条件を入力して書き出し

    ちょっと多く見えますが、殆どはソフトが自動でやってくれるので、
    実際にはソフトが判断しきれなかった部分を微調整するぐらいなものです。
    ではそれぞれのステップについて詳しく説明をしていきます

    ファイルの読み込み
    ソフトを立ち上げるとすぐに写真データを読み込むためのダイアログが出てくるので、
    先ほど出力したTIFFデータをまとめて指定し読み込んでください。以下、少々マニアックな内容ですが、
    Starry Landscape Stacker
    はダークフレームやフラットフレームにも対応しているので、
    必要な方はライトフレームと一緒に読み込んでください。
    読み込みが完了すると各ファイルがいずれのフレームに該当するかを設定するダイアログが出てきます。
    ダークフレームやフラットフレームを利用しない場合は 全てライトフレームに設定してください。
    写真上で星の位置を選択
    読み込みが完了すると明るい星の上に赤いマーカーが配置され、以下のような画面になります。
    このマーカーは位置合わせの補正量算出に使うだけなので全ての星の上に配置する必要はありません。
    むしろ気をつけるべきは星以外のものにマーカーが配置されないようにすることです。
    もし星以外のものにマーカーが配置されていた場合には、
    Erase Red dotsをクリックし、不要なマーカーを消してください。
    配置されたマーカーの数があまりにも少ない場合には、
    Add Red dotsを選択し、適宜マーカーを追加してください。マーカーの調整が終了したら、
    左側のメニューの上の方にある”Find Sky”をクリックしてください。
    ソフトが自動でマスクを作成してくれます。

    空に該当する部分のマスクを作成
    写真の内容にもよりますが、完璧なマスクが作成されることはあまりないので、
    ここから微調整を行っていくことになります。ちなみに自動で作成されたマスクでは以下のような状況になっていることが多いです
    ・ 明るい星がマスクされていない
    ・ 前景(地上)との境界部がマスクされていない微調整は左側のメニューから
    GroundあるいはSkyを選び、ブラシサイズを決めて、
    塗ったり消したりして行います。
    先に大きめのブラシでざっくりと調整した後、
    等倍表示に切り替えて細かく調整していくといった流れが良いでしょう。
    画面のスクロールはスペースキーを押したままマウスでドラッグするのが便利です マスクの作成が完了したら左側のメニュー上の方にある
    “Align With”をクリックしてください。

    スタックの基準となるファイルの選択
    続いて、読み込んだ写真ファイルのなかから、どのファイルを基準にスタックしていくか選択します。
    基準の選び方次第では、空の端の方でスタックされる枚数が極端に減ってしまうので
    時系列で並べた時に真ん中あたりのファイルを基準に選んでおくと影響が最小になり良いと思います。
    ソフトのデフォルトの設定は上記考えに基づいたものになっているので、
    特に変更が必要ない場合は、そのまま“Align and Save”をクリックして次のステップに進んでください。もし、別のファイルを選択する必要がある場合は
    左側のメニューの下の方にCurrent Imageという表記があるので、
    その横にあるリストボックスから基準にしたいファイルを選び、
    その上で”Align to Current Image”をクリックし、
    “Align and Save”をクリックして次のステップに進んでください。

    スタックの条件を入力して書き出し
    最後にスタックの条件を設定します。
    左のメニューにあるリストボックスには以下の4つの選択肢が用意されていますMean    平均値 : 最も基本的なノイズリダクション。ただし飛行機の軌跡や流星がうっすらと残る
    Median 中央値 : 平均値に似た出力が得られるが、飛行機の軌跡や流星のような外乱は排除される。
    Max      最大値 : もっともノイジーな出力(ノイズ除去ではなく、流星などをしっかり残した出力を得るためのもの)
    Min       最小値 : 用途不明

    今回はノイズ低減を目的としているので、MedianかMeanで良いと思います。
    流星等もちゃんと残しておきたい場合は、MedianかMeanで出力したものとMaxで出力したものをPhotoshop等でコンポジットするのが良いでしょう。スタックの条件が決まったら最後に”Save”をクリックし、
    スタック後のイメージとマスクを保存し終了です。
    マスクは作業をやり直す際に利用できますが、そのつもりがなければ削除していただいて結構です。

  4. レタッチ

    ここまで来たら、あとはStarry Landscape Stackerで得られたノイズの少ない写真データに対し、
    PhotoshopなりLightroomで追加の現像やレタッチをして完成です。
    なお、スタックする前に色々と現像していただいても構いませんが、読み込む全ての写真に対して現像内容の同期をする必要があるので、
    重めの現像やレタッチはスタック後にすることをオススメします。
  5. 追記

    説明用に動画を作成しました。
    多少わかりやすくはなっていると思うので是非ご覧ください。

    https://youtu.be/EcoA8M1rw5k

    サンプルのRAWデータもアップロードしましたのでよろしければご利用ください
    https://drive.google.com/open?id=1_fHR32hVaqozXFO43pNsDh7M3_FfKOXw

以上がStarry Landscape Stackerの使い方でした。
少々長くなってしまいましたが、最後までお付き合いくださりありがとうございました。

以下、参考URLです
https://itunes.apple.com/us/app/starry-landscape-stacker/id550326617?mt=12
https://sites.google.com/site/starrylandscapestacker/home
https://petapixel.com/2017/07/05/get-noise-free-star-photos-starry-landscape-stacker/

ご質問、ご指摘等がありましたら遠慮なくメールやコメントでご連絡ください